ミチーガの勉強会を行いました
2025.08.29更新
先日は、アトピー性皮膚炎の新たな治療薬である『ミチーガ』についての勉強会を開催しました。
本日は、このミチーガについて、そしてアトピー性皮膚炎という病気について、皆様にお伝えしたいと思います。
◎新しい治療薬『ミチーガ』について◎
『ミチーガ』は、これまでの治療で十分な効果が得られなかった患者様にとって、新たな選択肢となる可能性を秘めたお薬です。
かゆみというアトピー性皮膚炎の最もつらい症状を根本から抑えることで、睡眠の質の向上、生活の質の改善にもつながることが期待されます。
◎ミチーガとは◎
ミチーガの有効成分であるネモリズマブは、アトピー性皮膚炎の「かゆみ」に特化して開発された初めての注射薬です。
アトピー性皮膚炎の患者様の皮膚では、「IL-31(インターロイキン31)」というサイトカイン(情報伝達物質)が過剰に産生されています。
このIL-31は、別名「かゆみのサイトカイン」とも呼ばれ、皮膚の末梢神経に存在する「IL-31受容体」と結合することで、脳にかゆみの信号を送ります。
ミチーガは、IL-31がどれだけたくさんあっても、かゆみの信号が伝わるのをブロックすることで、かゆみの悪循環を根本から断ち切ることを目指します。
◎特徴◎
• かゆみを直接抑える: ミチーガは、かゆみの原因物質であるサイトカイン「IL-31」の働きをブロックすることで、かゆみの悪循環を断ち切ります。
• 高いかゆみ抑制効果: 臨床試験では、ミチーガを投与した患者様で、かゆみの改善が早期から認められました。
• 投与間隔: 4週間に1回の皮下注射です。ご自宅で自己注射することも可能です。
• 対象となる方: 既存の治療で効果が不十分な、重症のアトピー性皮膚炎の患者様が対象となります。
◎期待される効果と投与について◎
• かゆみへの即効性: 臨床試験では、投与後比較的早い段階からかゆみの改善が認められています。個人差はありますが、投与翌日には効果を実感する患者様もいらっしゃいます。
• 長期的な効果: IL-31は、かゆみだけでなく、皮膚のバリア機能の低下や炎症にも関与していると考えられています。そのため、ミチーガを継続して使用することで、炎症そのものの改善にもつながることが期待されます。
• 投与方法: 6歳以上のアトピー性皮膚炎患者様が対象となり、4週間に1回の皮下注射で投与します。13歳以上の方には60mg、6歳以上13歳未満の小児には30mgが投与されます。
• 自己注射: 医師の指導のもと、ご自宅で自己注射を行うことも可能です。これにより、通院の負担が軽減されます。
◎注意すべき点と副作用◎
ミチーガはかゆみに対して高い効果が期待できますが、治療を行う上でいくつか注意すべき点があります。
• 既存治療の継続: ミチーガは、あくまで「かゆみ」を抑えるお薬です。そのため、炎症を抑えるためのステロイド外用薬や保湿剤による日々のスキンケアなど、これまでのアトピー性皮膚炎治療は継続する必要があります。
自己判断で中止しないようにしましょう。
• 皮膚症状の悪化: まれに、ミチーガ投与後にアトピー性皮膚炎の症状とは異なる浮腫性紅斑や湿疹などの皮膚症状の悪化がみられることがあります。
何か異変を感じたら、すぐに医師にご相談ください。
• 費用: ミチーガは高価な薬剤ですが、医療費助成制度(高額療養費制度など)を利用できる場合があります。費用についても遠慮なくご相談ください。
では次にアトピー性皮膚炎についてお話しします。
◎アトピー性皮膚炎とは◎
アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返す、かゆみのある湿疹を主な病変とする皮膚の病気です。
1. 症状
症状は、年齢によって特徴が異なります。
• 乳幼児期: 頭、顔、耳にジクジクした湿疹ができやすく、悪化すると体や手足にも広がります。
• 小児期: 肘や膝の裏、首、手首、足首など、関節部分にカサカサした乾燥性の湿疹が多く見られます。
• 思春期以降: 顔、首、胸、背中、そして手足の関節部分に、慢性的な湿疹が見られます。皮膚が厚くゴワゴワしたり、色素沈着が起こることもあります。
最もつらい症状は「かゆみ」です。特に入浴後や寝る前、温まるとかゆみが強くなり、掻きむしってしまいがちです。掻くことでさらにかゆみが誘発され、症状が悪化するという悪循環に陥ります。
2. 原因
アトピー性皮膚炎の原因は、一つではありません。複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
• 皮膚のバリア機能の低下: 健康な皮膚は、外部からの刺激(アレルゲン、細菌など)や水分の蒸発を防ぐバリア機能を持っています。アトピー性皮膚炎の患者様では、このバリア機能が低下していることが多く、アレルゲンなどが侵入しやすくなっています。
• 免疫の異常: IL-4、IL-13、IL-31といったサイトカイン(細胞から分泌されるタンパク質)が過剰に産生され、炎症やかゆみを引き起こします。
• 遺伝的要因: アトピー素因(アレルギーを起こしやすい体質)は遺伝することがあります。ご家族にアレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎など)がある場合、発症リスクが高まると言われています。
• 環境要因: 汗、乾燥、ハウスダスト、ダニ、花粉、食物などのアレルゲン、ストレスなどが症状を悪化させる要因となります。
3. 対策
アトピー性皮膚炎の治療の基本は、以下の3つの柱から成り立っています。
1. 薬物療法: 炎症を抑えるためのステロイド外用薬やタクロリムス軟膏(プロトピック®)、最近ではJAK阻害剤などの内服薬や注射薬が使用されます。
2. スキンケア: 毎日のお風呂で汚れを優しく落とし、保湿剤で皮膚のバリア機能を補うことが非常に重要です。
3. 悪化因子の除去: 汗をかいたらシャワーを浴びる、アレルゲンを避ける、ストレスを溜めないようにするなど、症状を悪化させる要因を特定し、避けることが大切です。
◎最後に◎
アトピー性皮膚炎は、患者様ご自身だけでなく、ご家族にとっても大変つらい病気です。しかし、医学は日々進歩しており、新しい治療薬や治療法が次々と登場しています。
当院では、患者様一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせた最適な治療法をご提案できるよう、日々新しい知識を学び、研鑽を積んでおります。
かゆみや湿疹でお悩みの方は、決して一人で抱え込まず、お気軽に当院にご相談ください。皆様の健やかな皮膚を取り戻すお手伝いができれば幸いです。
~医療法人社団 俊爽会 理事長 小林俊一 監修~
《平井皮膚科の特色》
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